忘れるために書くブログ

主に書評ブログ

岡倉天心の『茶の本』の筆写を始めた③

www.writetoforget.com

Chapter3 Taoism and the Way of Tea ~第三章 道教と茶道~

Chapter3 Taoism and the Way of Tea ~第三章 道教と茶道~の筆写が終わった。

f:id:forgetblog:20180202162644j:plain

英語版

英語版はThe Book of Tea 茶の本 ラダーシリーズ

全文載っている完全版ではないが(おそらく複雑な表記や古い表現の箇所はあえて削っていると思われる)、読みやすいように構成されている。

日本語版

日本語版は青空文庫から出版されている茶の本。 

AmazonKindleでは無料でダウンロードできる。

岡倉覚三 村岡博訳 茶の本 茶の本→こちらのサイトにも全文掲載されている。) 

英語→日本語→わからない語彙を調べる

前回同様、英語版を1ページ分ルーズリーフに書き写すことから始めた。

そして日本語訳を英文の下に書き写し、英語版では削除されていた部分の日本語訳は別途書き写し、英語・日本語共に、わからない言葉や単語、曖昧に覚えているものは全て調べて余白に書き込んだ。

第三章は主に道教について書かれているが、日本語訳は小難しい表現が多くてわかりにくい。(90年前の訳なので仕方ないけど)

抽象的な概念の説明は、シンプルな英文の方が理解しやすかった。

道教と茶の関わり

茶道が禅の世界と関係があるのはよく知られていることだが、道教(Taoism)*1も茶の沿革と深い関わりがある。

According to an old Chinese book,the ceremony of offering tea to a guest began when Kanyin,a well-known follower of Lao-tzu,offered the master a cup of tea at the Han Pass.

 

風俗習慣の起源に関するシナの教科書に、客に茶を供するの礼は老子の高弟関尹に始まり、函谷関で「老哲人」にまず一碗の金色の仙薬をささげたと書いてある。

 

【私の意訳】

古い漢書には、老子*2の弟子としてよく知られた関尹*3が、函谷関*4で老子にお茶(仙薬)をもてなしたのが始まりだと書いてある。

「道」の用法

道教の「道」は文字通りの「径路」の他に、「行路」「絶対」「法則」「自然」「至理」「方式」と訳されることがある。

老子自ら下記のように言っている。

There is a thing which is all-containing,which was born before the existence of Heaven and Earth.

 

物有り混成し、天地に先だって生ず。

 

【私の意訳】

「道」は天地が存在する前に生まれた、全ての意味を含む1つの言葉。

道教徒の「道」の用法は、問題にしている話題によって異なる。

永遠の成長

The Tao is the passage rather than the path.

 

「道」は「径路*5」というよりもむしろ通路*6にある。

 

It is the spirit of endless change,forever producing new forms.

 

宇宙変遷の精神、すなわち新しい形を生み出そうとして絶えずめぐり来る永遠の成長である。

 道教の「道」には「永遠に変化し成長し続ける」という意味もある。

絶対が相対

The Taoist Absolute is the Relative.

 

その絶対*7は相対的*8なものである。

 道教においては「絶対」が「相対」。

(なんかややこしい(笑))

一定と不変 

To say that something is fixed and unchanging is to say that it is no longer capable of growth.

 

「一定」「不変」は単に成長停止を表す言葉に過ぎない。 

道教の世界では、「一定」や「不変」は成長の見込みがないということにほかならない。

先日読んだ『他人の壁』の中で養老先生は、人間の体を構成している成分は7年で100パーセント入れ替わるとおっしゃっていた。

人間の体もずっと不変でいることはない。 

www.writetoforget.com

 

美を見出す

Taoism accepts the everyday world of our lives.Unlike Confucianism and Buddhism,it tries to find beauty in this world of pain and worry.

 

道教は浮世をこんなものだとあきらめて、儒教徒や仏教徒とは異なって、この憂き世の中にも美を見出そうと努めている。

宋時代の『三人の酢を味わう者』というたとえ話が、三教義の傾向をうまく説明していると天心は言っている。

仏陀、孔子、老子が人生の象徴である酢の瓶に指をつけて味わって語った言葉。

仏陀は「苦い」、孔子は「酸っぱい」、老子は「甘い」。

We must see the big picture in order to understand our role.The whole must not suffer at the hands of the individual.

 

われわれはおのれの役を立派に勤めるためには、その芝居全体を知っていなければならぬ。個人を考えるために全体を考えることを忘れてはならない。

道教は状況と調和して、世知辛い世の中に美を見つけ出した。

空虚にこそ本質がある

The reality of a room lies in the empty space created by the roof and walls,not in the roof and walls themselves.

 

たとえば室の本質は、屋根と壁に囲まれた空虚なところに見出すことができるのであって、屋根や壁そのものにはない。 

孔子はこのような隠喩を用いて「空虚」にこそ本質があると解いた。

Empty space is powerful because of what it can contain.

虚はすべてのものを含有するから万能である。

 

A person who can make himself empty becomes the master of all people and all situations.

 

おのれを虚にして他を自由に入らすことのできる人は、すべての立場を自由に行動することができるようになるのであろう。

「自分を空にすることができる人は、全ての人間と状況を操るマスターになる!」ということ?

抽象的な概念を理解するのは難しい。

「わかるようでわからない、わからないようでわかる」といった感じだけど、それでいい気もする。

道教の影響を受けた禅

相対性を重んじる

Zen, like Taoism, is a religion of relativity.

 

禅道は道教と同じく相対を崇拝するものである。

個を重んじる

And Zen, like Taoism,  is a strong supporter of the individual.

 

さらに禅道は道教と同じく個性主義を強く唱道した。

日常の出来事が思想と同じくらい重要

Zen has played a special role in Eastern thought by recognizing that the things of our daily life are just as important as the things of the mind.

 

禅の東洋思想に対する特殊な寄与は、この現世の事をも後世のことと同じように重く認めたことである。

 

 【私の意訳】

禅は、日常の出来事が思想と同じくらい重要であると示した点で、東洋思想において特別な役割を果たした。

以前見たAmazonプライムの Prime Japanで、禅は日々の雑事も修行と捉えて一つ一つ丁寧に行うとあった。

何気ない日常を大事にすることで、日々は輝きを放つそうだ。

これを読んで、星野源さんの『そして生活はつづく』を思い出した。

過労で倒れた星野さんがお母さんから言われた言葉。

「過労?……ああ。あんた、生活嫌いだからね」 「え?」「掃除とか洗濯とか そういう毎日の地味な生活を大事にしないでしょ。だからそんなことになるの」

(引用そして生活はつづく (文春文庫)

www.writetoforget.com

The way of tea is a result of this Zen view of life,of the greatness of life appearing in its smallest objects and events.Taoism provided the foundation for this art of life,and Zen made it practical.

 

茶道いっさいの理想は、人生の些事の中にでも偉大を与えるというこの禅の考えから出たものである。 道教は審美的*9理想の基礎を与え、禅はこれを実際的なものとした。

道教によって美の理想の基礎が作られ、禅はそれを「茶道」という形で実現した。

 

それにしてもこの章は難しかった。

難しくて、何度も筆写する手が止まった。

次はいよいよ「茶室」の章に突入。

*1:中国三大宗教の1つ

*2:道教の開祖。

*3:かんいん。中国の思想家。

*4:かんこくかん。中国江南省にあった関所。

*5:人や物の通っていく道筋。

*6:人や物の移動のために空けてある場所。

*7:何物にも比較されないこと。

*8:他との関係・比較の上で成り立っているさま。

*9:美醜を見分け判断しようとすること。