タイトルに惹かれて損する結婚 儲かる離婚 (新潮新書)を読んだ。
私には縁のない「結婚」がテーマだが、「結婚」という契約を金融商品に見立て、日本の法律がどうなっているかを面白く教えてくれる。
「結婚」という契約に対し、日本の司法がどのように対応するか知っておくことは大事なことだ。
なんなら結婚する前のカップルにゼクシィと一緒にこの本も薦めたいくらいだ。
恋愛真っ最中だと、「恋愛って素晴らしい」「好きな人と結婚して一生幸せになりたい」とドラマや映画、漫画に洗脳されやすいが、「結婚」とは契約だ。
その契約が不履行になった時、日本の法律がどう対応するかを知っておくだけで、初動が全く変わる。
一番は離婚しないことだが、「結婚」という制度が全ての人に幸せをもたらすとは限らない。
まさかの時に備えて知識を得ておくことは大事だ。
日本では浮気に対する慰謝料は100万か200万
芸能ニュースなどでよく報道される「慰謝料〇△千万」などは、離婚した際に総額支払われた金額のことがほとんどだ。
法律で言う慰謝料とは若干ニュアンスが違い、たとえ芸能人であっても慰謝料自体高額になることは少ないそうだ。
離婚で支払われる金の大部分は、じつは所得で決まる婚姻費用と財産分与がほとんどなので、どちらが浮気したとか暴力をふるったとか、そういうことは関係ないのである。まじめに働いていたほうが馬鹿をみる世界なのだ。
意外と知らない婚姻費用
この本を読んで「婚姻費用」について初めて知った。
お金持ちと結婚した場合、その人が不倫して離婚となったら、高額の慰謝料を請求できるもんだと思っていた。
しかし日本の法律は違った。
ここで重要なことは、結婚前に持っていた金は関係ないということだ。
お金持ちと結婚した場合、生活自体は潤うかもしれない。
しかしいざ離婚となった場合は自分が婚姻費用を払わなくてはいけない可能性もあるそうだ。
この婚姻費用は離婚が決まるまで別居中の相手の生活費を支払うもので、金額に関しては算定表があってサクッと算出されるんだそう。
婚姻費用の支払い義務は、配偶者には自分と同程度の生活をさせなければいけないという考え方に基づいている。
婚姻費用は持っている財産は一切関係なく、フローで稼いでいる所得によって決まる。
例えば不倫をして、非がある方に収入がなくて離婚をしたくないと粘られてしまうと(不倫などの場合、裁判官に証拠を示して認めてもらうのは難しいそう)、非のない収入のある方が婚姻費用を支払わなくてはいけない。
不倫をしていないと主張し、離婚しないと相手が粘る期間が長ければ長い程、長期間婚姻費用を支払わなければならず、多額のお金がとんでいくそうだ。
ちなみに性別は一切関係なし。
(法律は男女平等。)
あくまで稼ぎが多い方が支払う。
自分に非がなくても相手に支払う可能性のある費用があるって、なんという理不尽。
離婚で動く金の大部分が、どっちが悪いかとは直接的には無関係なのである。
結婚するタイミングが大事な財産分与
財産分与とは結婚後に蓄えられた財産(=共有財産)を夫婦で分割すること。
財産分与は結婚して二人で増やした財産を分与するものであって、財産が増えていなければ支払い義務も発生しない。
世界的大富豪FacebookのCEOマーク・ザッカーバーグは、Facebook創業前から付き合っていた恋人プリシラとFacebookの株式公開直後に結婚した。
これは絶妙なタイミングだったようだ。
万が一結婚せずにプリシラとの間に事実婚が認定されてしまうと、もし二人が別れた場合、マークは自分が保有している2兆円にものぼるFacebookの株式の半分の1兆円をプリシラに請求される可能性があったとのこと。
しかし株式公開後に籍を入れることで二人の結婚のスタートを明確にした。
マークは「結婚」することで、財産分与という財政的なリスクを最小化したようだ。
(マークは世界有数のグローバル企業のCEOなので、周りに有能な弁護団がついてリスク回避をする戦略を練っているのかもしれない。)
マークの長年の恋人プリシラは頭脳明晰で地に足がついたしっかりした女性で、マークのお金がなくとも一人でたくましく生きていけるようだが、マークと一緒に暮らすにあたり「リレーションシップコントラクト(デートは週1回。2人だけの時間を最低100分持つこと。デートの場所は彼の自宅やフェイスブックのオフィス 以外の場所)」を結ぶくらいなので、いざとなったらわからない。
スポーツ選手や俳優の離婚にまつわる巨額の支払い金額はよく話題になるが、離婚が本当に恐ろしいのは、実は起業家なのである。創業する前に結婚して、会社がとうとう上場し、そして離婚、ということになると、夫の持ち分の半分がいきなり奥さんのものになるのだ。これはハゲタカ・ファンドどころの騒ぎではない。ハゲタカ・ファンドは株を買い占める時に、その分の現金を置いていくが、奥さんはなんの支払いもなしにいきなり株の半分を持っていくのである。
億単位の財産を持っている無職の人と結婚→離婚となった場合も、もちろん財産分与はない。
なんなら結婚中自分が働いて財産が増えた場合は、自分が億単位の財産を持っている相手に財産分与をしなくてはいけない。
結婚前に持っていた財産は一切関係なく、あくまで結婚後に財産が増えているか・いないかが問題なのだ。
子どもは小さい、手に職はない
東洋経済オンラインのこの記事の女性、まず初動が間違っている。
年収3,000万の旦那さんに不倫され、自宅と高級車と養育費600万で離婚をしてしまう。
この記事を読む限り、自宅を売ってすぐに現金化するのは難しそう。
(東京から電車で1時間以上かかるベッドタウン。最寄り駅から20分以上歩く。)
となると子供も抱えて仕事もしていないこの人に必要なのは何よりキャッシュだ。
婚姻費用のことを知っていれば、この奥さんも初動を間違わずに済んだかもしれない。
(働いた経験がほとんどない二人の子供を抱えた女性に渡した養育費が600万って、なんてみみっちい男だ。)
過ぎたことは仕方ないので、まずは高給取りの旦那の奥さんだった見栄を捨てることから始めてみてはどうだろう?
若さやきれいさは資産価値ゼロになる
20歳から40歳までに、いかにキャリアを磨いて自分の資産価値を高められるか。人生経験や経済観念、人に対する優しさ、仕事のスキル…。女磨きって、エステやネイルサロンに通うことじゃないんです。 危機回避のための知識を持っている女性は実に少ない。知識がないと逃げ遅れます。いま愛している相手でも、変わることがある。いざという時にはすぐ逃げていい。逃げるためのお金は必ず持っておいて。世知辛い話だけど、きちっと伝えてあげてほしいです。
西原さん、ええこと言うな~。