J-REIT(不動産投資信託)について調べたので、備忘録として記録する。
REITとは何か?
多くの投資家(企業や個人など)から資金を集め、オフィスビルや商業施設、マンション等の複数の不動産を購入・運用し、そこから得られる物件の賃料収入や売買益を投資家たちに分配する金融商品(投資信託)のこと。
2001年に誕生した不動産の投資信託。
J-REIT(不動産投資信託)は、定期的に分配金を受け取る金融商品なので、中長期的にインカムゲインを狙う金融商品。
バブルの頃は不動産は何でも値上がりするという時代で、キャピタルゲイン(値上がり益)をメインとする投資が当たり前に行われていたが、現在の不動産投資はインカムゲインという考え方が定着している。
(引用 http://j-reit.jp/market/04.html)
銘柄数は2017年4月現在58銘柄となっており、リーマンショック時は時価総額が大きく落ち込むも、現在の時価総額は伸び続けている。
(引用 http://j-reit.jp/market/02.html)
東証REIT指数は2003年から3倍以上に増えている。
(引用 http://j-reit.jp/market/06.html)
用途別比率はオフィスが断トツ1番、次いで商業施設、住宅となっている。
オフィスは市場規模が大きいが、テナントの多くが会社なので、景気変動や会社業績によって賃料収入に影響を及ぼす可能性がある。
商業施設は郊外にある大型ショッピングセンターのようなタイプと、都心にある高級ブランドの小売店のようなタイプに分かれる。郊外のテナントは長期間一括で借りている場合が多く、賃料収入は比較的安定している。
都心の商業ビルは売上、景気変動の影響を受ける傾向にある。
住宅は居住用のため、オフィスビルより賃料収入は安定している。
(引用 http://j-reit.jp/market/07.html)
所在地は関東圏が7割弱を占め、そのうち都心5区が35%を占めている。
(引用 http://j-reit.jp/market/11.html)
2016年8月時点のJ-REITの保有金額は、金融機関が約半数を保有しており、次いで外国法人、事業法人、個人となっている。
(引用 http://j-reit.jp/market/03.html)
2017年4月のJ-REITの平均予想分配金利回りは3.87%となっている。
J-REITの買い方
株式と同じで、証券会社の窓口やインターネットによる取引で売買ができる。
税務上の取り扱い
こちらも株式と同様、分配金や売却益には20.315%の税率が適用される。
特定口座を利用していれば、確定申告の必要もなし。
※ただしNISA口座を利用の場合は、投資金額120万円まで非課税。(5年間)
J-REITのメリット
①小さい金額から投資ができる
現物投資に比べ、J-REITは一口10~100万円前後で投資が可能。
②株式と同じように取引ができる
換金性が高い。
③手間がかからない
運用は不動産のプロが行うため、手間がかからない。
④分散投資ができる
J-REITは数件から数百件の物件を運用している。
⑤配当性向が高い
J-REITは利益の90%超を配当すると法人税が実質的に免除されるため、利益の大部分が投資家に分配される。
⑥情報開示が充実している
保有物件や財務状況が詳細に開示されている。
J-REITのデメリット
①価格変動リスク
株式同様、投資口は日々変動している。
(元本保証無し)
②分配金減少リスク
テナントの撤退、賃料値下げによる賃料収入が減り、分配金が減少することがある。
J-REITは銀行等から借入をして物件を購入しているので、銀行の金利が上昇すると分配金が減少することがある。
(分配金保証無し)
③自然災害によるリスク
地震、台風等の自然災害による偶発事象で不動産の収益性が低下するリスクがある。
④法制度変更によるリスク
不動産税制、建物の建築規制の変更などによる不動産の価値が低下し、J-REITの価格も低下するリスクがある。
国交省のメンツでJ-REITは潰れない?
外資系のニューシティ・レジデンス投資法人が借入金のリファイナンスに行き詰まり、民事再生法の適用を申請。業界初の経営破綻が発生したことで“不倒神話”は一転して大きく揺らいだ。今回の救済策は、国交省が面子と縄張りを守るため、躍起になって急ごしらえしたものと受け取れなくもない。「国交省はREITを潰させない」――。実際、貸し手である銀行などは、今回の救済策をそう受け取っている。
2007年のサブプライムローン問題と翌年のリーマンショックでJ-REITの市場が落ち込んだ時、金融機関の資金の貸し渋りで投資法人は資金繰りが悪化し、保有不動産の価格が大幅に下がり、売るに売れない状況がきた。
上記の記事に出てきたニューシティ・レジデンス投資法人は資金繰りが悪化し、経営破たんへとつながった。
そこで国が動き、J-REIT市場を全力でサポートする政策「不動産市場安定化ファンド」を立ち上げた。
償還期限を迎える投資法人債(社債)の償還が滞りなく行えるよう、必要があれば有志する制度のことです。収益は上がっているにもかかわらず、資金繰りができないために企業が破たんすることを防ぐ狙いがありました。
J-REITに関わる日本再興戦略
2015年の安倍政権が掲げた「日本再興戦略」の一つに、「訪日外国人者数を2020年には年間2000万人の高みを、2030年には年間3000万人を超えることを目指す」という目標があった。
日本政府観光局の訪日外国人の統計データを確認すると、2016年に2000万人を突破し約2400万人となっている。
REIT市場への影響面では、直接的な恩恵を受けるであろう宿泊施設や商業施設はもちろん、オフィスビルや住宅市場にも波及効果が及ぶことでしょう。なお前出の戦略には、有料老人ホームや介護施設、サービスつき高齢者住宅、病院等の施設を組み込む『ヘルスケアリート』の普及も目標に掲げられています。
J-REIT58銘柄中、ヘルスケアリートは3銘柄。
今後の日本再興戦略
先月末、未来投資戦略2017の概要が発表された。
未来投資戦略2017によると、「中長期的な成長を実現していく鍵は、近年急激に起きている第4次産業革命(IoT、ビッグデータ、人工知能(AI)、ロボット、シェアリングエコノミー等)のイノベーションを、あらゆる産業や社会生活に取り入れることにより、様々な社会課題を解決する「Society 5.0」を実現することにある。」としており、Society5.0に向けて日本の強みに政策資源を集中投資するとしている。
Society5.0に向けた戦略分野として、
が挙げられていた。
未来投資戦略2017(素案)、未来投資戦略2017(ポイント) を読むと、物流施設特化型、ホテル・旅館特化型、産業用不動産特化型(物流施設+工場/研究開発施設等+インフラ施設)のJ-REITが気になった。
不動産証券化協会が作成したARES J-REIT REPORT No.79 January 2017を読むと、昨年は物流とホテルが高成長していた。
2020年の東京オリンピック開催後の出口戦略はきちんと考えておかなければいけないが、2025年の国際博覧会の開催国として大阪が立候補したとのことなので、ホテル特化型のJ-REITは気になるところだ。
日銀の買い入れ
日銀の J-REIT 買入額は 887 億円(73 回)であった(16 年末までの累計買入額は 3,590 億円)。保有する J-REITの時価は、9 月末時点で 4,260 億円(簿価 3,355 億円)と公表されており、当時の J-REIT 市場の時価総額(11.7兆円)に占める割合は 3.6%だった。日銀は現在、年間約 900 億円のペースで J-REIT を購入している。16 年 5 月には、12 銘柄について保有比率が 5%を超えたため初めて大量保有報告書を提出した(年末時点では 15 銘柄に提出)。 ARES J-REIT REPORT No.79 January 2017
不動産証券化協会の資料をみると、日銀は年間900億円ペースでJ-REITの買い入れをしており、58銘柄中12銘柄の保有比率は5%を超えていることがわかる。
日銀は、『Jリート』ならば、どの銘柄でも購入するわけではありません。以下の2つの条件を満たす銘柄のみです。 条件①:格付け機関がつける判定が「AA格相当以上」である 条件②:買い入れ額は「発行残高の5%程度」
(引用 http://www.boj.or.jp/statistics/boj/other/acmai/release/2017/ac170531.htm/)
先月末の日銀の資産残高を見ると、簿価で約3940億円。
(他の資産と比べると、まだまだ低い。)
市場の規模も株式と比べるとまだ小さいので、投資をする前に各銘柄の流動性は要確認だ。
話は少し逸れるが、日銀のバランスシートが初めて500兆円を突破し、来年には日本のGDPを超えるようだ。
利益構造
J-REITを運用する投資法人は不動産投資以外の事業を行うことは認められておらず、従業員も雇うことができない。
実際の運営は委託を受けた運用会社等が行い、税引き前利益の90%超を投資家へ還元する条件を満たせば、実質的に法人税が免除される。
利益の大半を分配金にしてしまうので、内部留保が少ないことがJ-REITの特徴ともいえる。
増資に注意する
J-REITは内部留保を貯めにくい為、資金調達の選択肢の一つとして「投資口」を新たに発行する「増資」の活用が多い。
増資をすることで利益が増えて分配金も増えれば問題ないが、利益が増えないまま投資口が増えると1投資口当たりの利益が小さくなることもある。(利益の希薄化)
またそのことで、投資口価格が下落する傾向もある。
投資家にとって「増資は悪なのか?」といえば、そういうわけではありません。その増資によって1投資口あたりの利益が増えるのであれば、問題ナシです。(中略)つまり希薄化した分以上に利益が増えれば、投資家にとっても良いわけなので、増資の際には<質>の見極めが求められます。
内部留保にできるもの
- 売却益
- 負ののれん
「負ののれん」とは、会計上の用語で、企業や事業を買収する際に買収額が買収される側の時価純資産額を下回る場合に生じる<差額>です。
地価の動向
公示地価
「公示地価」とは、「地価公示法」に基づき、国土交通省が毎年1回公示する標準地の価格のことです。毎年1月1日時点での地価が、3月下旬頃に公表され、これが売買する際の価格を<客観的>に判断する1つの目安とされます。
基準地価
各都道府県が調査に基づいて、公表する土地の価格のことです。こちらは毎年7月1日時点の地価が9月下旬に公表されます。
公表されるデータは実際の調査時間等を含めると、現場での実感とは数か月のズレがあるので、投資判断をする際には気をつけるようにとのこと。
NAV倍率
投資法人が保有する不動産の価値から見て、割安かどうかを判断するための基準になります。NAVとは「Net Asset Value」の略で、「投資法人の純資産価値」のことです。
この倍率が1倍を割り込んでいれば割安と判断され、逆に1倍を大きく上回っていると買われ過ぎと判断される。