勝負師の考える「決断」

この本の作者である桜井章一氏は、昭和三十年代から裏プロの世界で勝負師としての才能を発揮し、代打ちとして二十年間無敗の伝説を築いた人だ。

今回数ある桜井氏の著書の中で私が選んだのが、決断なんて「1秒」あればいい (ソフトバンク文庫)だ。

勝負師の考える「決断」に興味を覚えたからだ。

1秒で牌を捨てる

麻雀は単純に考えれば、牌を入れ替えるだけのゲームだ。だから、1秒で牌を捨てることは不可能ではない。牌を持ってきたら、サッと捨てる。(中略)これは、瞬間的判断を養うのにかなり役立つからだ。君が麻雀をやったことがあれば、このツモっては捨てるという、牌を入れ替える感覚がわかるだろう。

最近スマホのアプリで麻雀を始めた。

今のところ簡単なルールしか覚えていないが、やってみるとこれが面白い。

この本を読んで「1秒で牌を捨てる」という練習をしているが、意外と難しい。

ただのスマホのゲームだが、「1秒で牌を捨てよう」と意識したところで、心臓が高鳴り肩に力が入る。

最初のうちは、牌を引くたび「どれを残してどれを捨てよう」といちいち時間をかけて悩んでいたが、「1秒で牌を捨てる」に変えてみたところ、(今のところ)最下位になることがなくなった。

時間をかけて悩むより、リズム良く動くことで流れが掴みやすくなるのだろうか?

桜井氏は、決断に時間をかけると邪念が入っていい結果をもたらさないと言っている。

なるほど。

麻雀は奥が深い。

いい勝負をする

負けない人生とは何か。勝つことも負けることもすべて受け入れ、「楽しむ」人生である。(中略)いい勝負をする覚悟さえ持ってすべてに対処すれば、人生は何も怖くなくなる。

「勝とう」と意識すると、ついつい力が入って視野が狭くなるが、「とりあえず負けないようにしよう」と考えれば、体の力みも少しは和らぐ。 (私の場合、実際の対戦相手が目の前にいるわけではないが、自分の気配を消すイメージでいる。)

「どうやったら勝てるか」ではなく、「いい勝負をする」ことを第一に考えると、相手が見えてくると桜井氏は言っている。

麻雀に限らず、人生全てにおける助言かもしれない。

準備、実行、後始末

実は、「決断力」とはそんな大げさなものではなく、いかに前もって「準備」してあるか、ただそれだけのことなのだ。「こうなったら、こうする」というシミュレーションをたくさん前もって考えておけば、決断はすぐに下せるのだ。

先日BS1で放送された「サムライゲーマー~賞金5億円 世界に挑む若者たち~」で、世界的プロゲーマーの梅原大吾さんの「背水の逆転劇」を知った。

これはかなり凄いことらしいのだが、この番組に出ていたプロゲーマーの人が言うには、梅原さんが凄いのはこの状況を想定をして練習していたところだそうだ。

可能性の低い状況もきちんと想定して準備(練習)していたそうだ。

追い込まれた精神状態で技を発揮するには、かなりの練習を積んだのだろう。

勝負の世界で戦う人間の哲学はなかなか面白い。