せかいのひとびと

10年以上前の話。

当時勤めていた会社の近くに、絵本の読める小さな喫茶店SEE MORE GLASS(シーモアグラス)があった。

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私はそのお店の玄米カレーとチャイが好きでよく通った。

10人も入れば満杯になってしまう狭い店内。

カレーが運ばれてくるのを待ちながら、そのお店においてある絵本をよく読んだ。

お昼のひととき、まるで子供の頃に一瞬だけタイムスリップしたような不思議な空間。

外の喧騒とは対照的だ。

ある時カウンターで食べていると、店長のお子さんがランドセルを背負ってお店に入ってきた。

少し離れたところに座ってお母さんの作るカレーを食べていた少年が、私は少し羨ましかった。

「君はこんな美味しいカレーをいつも無料で食べれるのね」

数えきれない流行が、もの凄いスピードで通り過ぎていく原宿の片隅で、変わらず一人でこのお店を守り続けている店長が私は好き。

2年前のちょうど今頃、私は東京を離れることになった。

最後にまたこのカレーを食べたいと思いお店を訪れたが、残念なことにその日は店休日で食べることはできなかった。

また東京に行くことがあればぜひ食べに行きたい。

店長のツイッターを見ると、たまに絵本が読みたくなる。

私が持っている絵本は1冊しかない。

せかいのひとびと (児童図書館・絵本の部屋)

5歳の頃に買ってもらった絵本で、過去に数々の断捨離を行ったが、それでも捨てることができなかった特別な絵本だ。

たぶん死ぬまで捨てない。

私はこの絵本の

ある人たちは 自分と ちがっている というだけで

よその人たちを きらう。そんなことって おかしいよ。

その人たちは 自分たちだって ほかの人から 見れば

ちがっているって ことを わすれているんだ。 

が好き。

5歳の頃から大人になった今でもそれは変わらない。