【書評】森下典子さんの「日日是好日」がよかった

日日是好日―「お茶」が教えてくれた15のしあわせ (新潮文庫)の著者である森下典子さんは、1956年生まれのエッセイスト。

猫を飼っている

お母さまと二人暮らし

お父さまは亡くなられている

私と共通点が多くて、親近感が湧いた。

www.kajiwara.co.jp

(森下さんのホームページ、ほんわかしていて可愛い。)

この方の本が読んでみたくなり、Amazonで探したところ、気になるタイトルを発見。

『日日是好日』

まるで何かの呪文のようなタイトル。

「にちにちこれこうじつ」と読み、意味は「天気の日も雨の日も、すべていい日」。

(「にちにちこれこうにち」が正しい読み方らしいが、森下さんはお茶のお稽古の際、「にちにちこれこうじつ」と読んでいたので、今回はこのフリガナにしたそう。)

お茶を習い始めて二十五年。就職につまずき、いつも不安で自分の居場所を探し続けた日々。失恋、父の死という悲しみのなかで、気がつけば、そばに「お茶」があった。がんじがらめの決まりごとの向こうに、やがて見えてきた自由。「ここにいるだけでよい」という心の安息。雨が匂う、雨の一粒一粒が聴こえる…季節を五感で味わう歓びとともに、「いま、生きている!」その感動を鮮やかに綴る。

「お茶」の世界は敷居が高くて、自分がいる世界とは別世界の話だな~なんて思いながら本を開いて読み進めると、

おばさんは左手で帛紗を帯びからシュッと抜きとると、右手で端をつまみ上げ、左手をすべらせながらもう片方の端を持って逆三角形にし、布を少したるませて、勢いよく左右にビンと引っ張った。

この描写を読んだとき、「あれ?この『ピン』という感じ、なんだか懐かしい」と思った。

「ん?なんでだ?」

帛紗(ふくさ)なんて単語初めて読んだし、なんのことかわからなかったはずなのに、朱色のハンカチのような布がふと頭に浮かんだ。

「あ!思い出した!」

私、幼稚園の頃「お茶」を習ったことがある!

といっても、通っていた幼稚園がたまたま仏教系だったので、幼稚園の授業(?)で習っただけだ。

30年以上も前のことなので、今は作法など何も覚えていない。

(そういえば、お茶碗みたいなのを飲む前か飲んだ後かに回したような気もする。)

自分とは縁の無い世界のことだと思っていたが、少しだけ身近に感じて続きを読んだ。

一期一会(一生に一度きり)

千利休がお茶を体系化した安土桃山時代は、織田信長や豊臣秀吉の天下だった。「昨日、元気だった友達が、今日殺されたなんてことがたぶんいっぱいあって、この人に会うのも今日が最後になるかもしれない、っていう切迫感がいつもあったんじゃない?」 

茶室は刀を持って入れない狭い入り口になっているそうで、命である刀を置いて武士はお茶を嗜んだ。

それは「死」が今よりも色濃い時代に生きていた人間に、唯一「無」になれる空間を提供するためだそうだ。

安全な日本に住んでいるとついつい忘れがちだけど、自分の命も、大事な人の命も、いつまでも続かない。

いつか終わりがくる。

その「いつか」は誰にもわからない。

今の生活に感謝して、大事な家族や友人、飼っている猫、自分を大事にして生きよう。

人の心も季節によって変化する

世の中は、前向きで明るいことばかりに価値をおく。けれど、そもそも反対のことがなければ、「明るさ」も存在しない。どちらも存在して初めて、奥行きが生まれるのだ。どちらも存在して初めて、奥行きが生まれるのだ。どちらが良く、どちらが悪いというのではなく、それぞれがよい。人間には、その両方が必要なのだ。

外交的な人も、内向的な人も、それぞれ長所と短所がある。

私は完全に内向型のお家大好き人間。

でも友達は外向的な人が多い。(というかほとんどそうかも)

両方いていいのだ。

学校とは違う「勉強」

この世には、学校で習ったのとはまったく別の「勉強」がある。あれから二十年が過ぎ、今は思う。それは、教えられた答えを出すことでも、優劣を競争することでもなく、自分で一つ一つ気づきながら、答えをつかみとることだ。自分の方法で、あるがままの自分の成長の道を作ることだ。 

「お茶」とは敷居が高い世界ではなく、懐が深くて日本の自然の変化を感じることのできる奥深い世界だとわかった。

森下さんは、「がんじがらめの決まり事のある世界の向こうにとてつもない自由がある」と表現されている。

この本を読むと、そのことがよくわかる。

柳家小三治さんの書評が素晴らしい

著者は、ひょんなことからお茶を始めた。ほんのちょっとしたきっかけ、というのがいい。こんなところから人生って始まるのかと。急にお茶が好きになって、のめり込むということもない。忘れない程度に時々やっていたことが、二十何年たって気がつくと、実は心の支えになっていたことがわかる。 

この書評素敵だな~。

「忘れない程度に時々やり続ける」っていい。

あまり思いつめない(期待し過ぎない)距離感がいい。

人間関係・事柄、全てのことに対する私の人生の教訓にしたい。

映画化

nichinichimovie.jp

武田先生は樹木希林さんが演じるようで、楽しみだ。

公開されたらぜひ観に行こう。