ずっと読みたかった減速して自由に生きる: ダウンシフターズ (ちくま文庫)をついに読んだ。
システムから降りて好きなことをしても大丈夫!そこには楽しい人生が開けている。経済成長を追い求める企業でストレスを抱え自分の時間もなく働く人生よりも、小さく自営し、人と交流し、やりたいことをしたい。そう考えた著者の、開業までの道のりと、開業の様々な具体的なコツと考え方、生き方を伝える。
作者の髙坂さんは30歳のときに心労で会社を退職し、日本と世界を旅する。
BARを経営する夢を叶えるために金沢へ移住し、友人のBARを手伝ったり、いろんな飲食店を掛け持ちでバイトして修行をする。
そして東京に戻り、池袋に小さなオーガニックのBARを出す。
そこまでに至る過程の出来事や気持ちの変化、現在のお店の無理のない経営方法がわかりやすく書かれていて、「皆がこういう生き方をするべき」というわけでもなく「こういう生き方もあるよ」というスタンスで読みやすかった。
「しかたない」で片付けない人生
私の知り合いや友人にも自営の人は何人かいるが、そのうちの一人は私が20代の頃に勤めていた会社でお世話になった方だ。
同じ会社ではなかったのだけど(取引先とでも言えばよいのかな?)、私が当時いた会社を辞めてからもメールでたまに連絡を取り合っていた。
その方は旦那様と一緒に会社を経営していたが、旦那様が亡くなり、不況も重なり心労で耳が聞こえなくなったそうだ。(今は回復している。)
これはもうダメだと思って会社を他に譲って休むことにした。
その間何をしようか考えたとき、自分には物づくりの趣味があることを思い出し、まずはその趣味を再開することにした。
すると楽しくて毎日があっという間に過ぎたそうだ。
今までやっていた仕事の内容とは全く違うけど、その方はその趣味を仕事にしようと決めた。
50歳を前にしてのことだった。
それから自分の作品を置いてくれるお店がないか調べて、手当たり次第直接交渉して歩いた。
そして運良く1件のお店に置いてもらえるようになり、今は生活に困らない程度の売上もあるそうだ。
私が何より嬉しかったのは、健康になったこと、毎日が楽しいとおっしゃっていたことだ。
この話を聞いた時はまだ会社員だったけど、当時の私は本当に羨ましかった。
私も煩わしい人間関係のない、自分の裁量で自由に働ける環境が欲しいと思ったが、自分には無理だと最初から諦めていた。
手に職があるわけでもなく、ましてややる勇気もない、なんて思っていたのだけど、いざ会社を辞めて自由な環境を味わったら手放すのが惜しく、「この環境を手放さないためにはどうすればよいのか?」と本気で考えるようになり、今はセミリタイアしてなんとか生活している。
私は毎日、料理と酒を通じてたくさんの人を見るのが仕事です。その中でわかってきたのは、「しかたない」で世の中の大きな問題を片付けてしまう人は、たいてい、自分の人生も「しかたない」で片付けているということです。
不安が消えたわけではないが不満は消えた
私は会社を辞めて自由な時間ができて考える時間が増えた。
そしていつの頃からか「もうやりたくないことをやる人生はやめよう」と思うようになった。
「自分が一番やりたくないこと」を考え、それをやらないためにはどうすればよいのか徹底的に考えた。
そしたら自分が必要だと思って使っていたお金は自分が考えているほど必要なく、それは世間体と見栄の費用だったと気がついた。
セミリタイアして不安が全くないわけではないけど、不満がないのでストレスがなくなった。
なんでも買わないと生活できない。何かを買えないと幸せになれない。そう思っていると無意識のうちに恐怖心が生まれ、ますます頑張って働かねばと思い込み、カネの奴隷になってしまいます。
しないことを増やす
phaさんの『しないことリスト』を読んで思ったけど、断捨離でモノを捨てるだけでなく、モノ以外のことも捨てることはできる。
過剰にモノ・サービス・広告が溢れている現代だからこそ、「引き算」の考え方の方が私はしっくりくる。
どんな店にしたいのかを聞き、望むライフスタイルを聞き、両者を実現するための売上基準を設けること。その基準以上稼がないことにすれば、おのずと「するべきこと」と「しなくていいこと」が見えてくること。すると夢実現のハードルを下げることができて、具現化しやすいこと。
理想は半分自給自足、いや1/3自給自足かな
こういう状況下で、お百姓さんの現金収入は多くないはずです。にもかかわらず、訪れる人に気前よく大盤振る舞いできることが不思議だったのです。でも少しずつわかってきました。自分自身で農を始めたから気付いたのかもしれません。作物は自然が与えてくれるものです。(中略)たくさん採れすぎてしまったら、腐らせてももったいないので、誰かにあげようと考えるでしょう。お漬物にして保存しようと思うでしょう。食べるものには困らないのだから、食べる以上に採れるものは、「分かち合う」という考えになるのです。
うちは祖母が残した畑で、親戚と母が協力して野菜や果物を育てている。
たくさんできるから近所の人や知り合いに譲っているけど、お礼といって新鮮な魚や果物、手作りデザートなどを頂く。
まさに物々交換の世界だ。
新鮮な野菜と果物を食べることがどんなに幸せなことかは、一人暮らしを経験してわかった。
東京で一人暮らしをしていた頃はあまり自炊はしなかったけど、たまにしようとスーパーに行っても野菜も果物も高く、あれもこれもと買うことはできなかった。
『人生フルーツ』 を観て考えたのだけど、親戚や母がいなくなって私一人になったら、畑の土を受け継いでうちにある小さな庭で作物を育てようと思う。
できれば自分が食べる半分、ダメなら1/3でも自給自足できる生活が理想。
今のうちから練習も兼ねて少しずつ育てていこうと思うが、今年はプチトマトに挑戦しようと企んでいる。
悔やむ人の特徴
退職をした人や転職を繰り返す人や立ち上げたビジネスが軌道に乗らない人のボヤキを聞くことは多々あります。それらの人には三つの共通点があります。「表面的な上昇志向が強いこと」「大量消費生活を変えていないこと」「好きなことを仕事にしていないこと」です。
少しスピードを落として生きてみたい方におススメの本だ。
posted with ヨメレバ
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