筆写に挑戦
南方熊楠は「読むということは写すこと」を信条とし、実行した偉大な天才だ。
その天才に少しでもあやかろうと、私も筆写を始めることにした。
関連記事
岡倉天心『茶の本』
筆写する最初の記念すべき第一冊目は、岡倉天心の『茶の本』にした。
以前森下典子さんの『日日是好日』を読んで、お茶や禅の世界に興味を持ったからだ。
関連記事
岡倉天心は文明開化が叫ばれた明治の時代、日本が西洋化を目指す中、日本美術の重要性と保護の普及に努めた人だ。
天心は『茶の本』以外に『東洋の思想』という本も英語で執筆している。
これらの本はニューヨークで出版され、東洋と日本文化の素晴らしさを西洋に広く伝えた。
英語版
今回英語版はThe Book of Tea 茶の本 ラダーシリーズを選んだ。
全文載っている完全版ではないが(おそらく複雑な表記や古い表現の箇所はあえて削っていると思われる)、読みやすいように構成されている。
日本語版
日本語版は青空文庫から出版されている茶の本を選んだ。
AmazonKindleでは無料でダウンロードできる。
(岡倉覚三 村岡博訳 茶の本 茶の本→こちらのサイトにも全文掲載されている。)
この本は今から約90年前に出版されているため、いくら母国語である日本語とはいえ、わかりにくい表現が多々あった。
(言語は生もので、少しずつ変わっているのだと実感。)
英語→日本語→わからない語彙を調べる
まずは英語版を1ページ分、ルーズリーフに書き写す。
次に日本語訳を英文の下に書き写し、英語版では削除されていた部分の日本語訳は別途書き写した。
英語・日本語共に、わからない言葉や単語、曖昧に覚えているものは全て調べて余白に書き込んだ。
理解しやすい
英語版と日本語訳の両方書き写した感想は、(日本語訳が古いということもあるが)対比させることで理解しやすくなった。
英語で理解しにくい部分は日本語訳、日本語訳の表現がわかりづらい部分はシンプルな英文で理解するという仕組みは、古い書物を読む場合は(私には)有効だと感じた。
1日少しずつ
ただ読むだけなら早くページを進めることもできるが、書き写すのはやはり時間がかかる。
1日数ページ、無理なく少しずつ進める予定。
Chapter1 The Cup of Humanity ~第一章 人情の碗~
今回は筆写が完了した第一章の感想。
英文を書き写しながら最初に思ったこと、
「天心さん、めっちゃすごくてカッコいいですやん!」
(なんでこの歳になるまでこの方の本を読まなかったのだろう…)
日本の文化や美術だけでなく、東洋、西洋についての知識もあり、尚且つ自国の言葉でなく異国の言葉でしっかりと自分の意見を述べる。
そこには日本人としての誇りが感じられ、「日本人よ、もっと毅然としろ」と言われた気がした。
When will the West understand the East,or at least try to understand it?
いつになったら西洋は東洋を理解するのであろう?理解しようとするのであろう?
It would be better for us to remain primitive and backward if our claim to civillization rests on the glory of war.
もしわれわれが文明国たるためには、血なまぐさい戦争の名誉によらなければならないとするならば、むしろいつまでも野蛮国に甘んじよう。
文明開化で急速に西洋化を目指した日本人にもきちんと苦言を呈しているところもいい。
こわばったカメラや丈の高いシルクハットを得ることが、諸君の文明を得ることと心得違いしていたのである。かかる様子ぶりは、実に哀れむべき嘆かわしいものであるが、ひざまずいて西洋文明に近づこうとする証拠となる。
『茶の本』、思っていたよりおもしろいぞ~。
次の章も楽しみ。