10年後の「すいか」の物語

ドラマ「すいか」が好き

15年前に放映された「すいか」というドラマが好き。

DVDを持っているので毎年夏になるとよく見ている。

今回このドラマの10年後の物語が書き下ろしとして収録されているすいか 2 (河出文庫)を読んだ。

34歳、独身、実家暮らしの信金OL・基子、双子の姉を亡くしたエロ漫画家の絆、曲げない信念ゆえに恐れられ、だけど慕われる大学教授の夏子、幼い頃母が男と出て行った大家のゆかちゃん。4人が一緒に暮らした、なんてことないけれどかけがえのないひと夏。10年後のハピネス三茶を描いた、書き下ろしのオマケも収録!

すいか 2 (河出文庫)

このドラマが放送された当時の私は25歳。

「会社行きたくない」

「結婚したい(会社辞めたいだけ)」

「なにもしたくない(ずっと寝てたい)」

「でも何かしなくちゃ(何を?)」

「きちんとした大人にならなくちゃ(きちんとした大人ってどんなだ?)」

などといつも焦って生きていた。

心の中の口癖は、常に「あぁ、幸せになりたい」。

そんな私は「すいか」に出てくる小林聡美さん演じる主人公の基子さん(信用金庫職員)が将来の自分に見えた。

当時世田谷線沿線沿いに住んでいたので、休みの日に用もないのによく三軒茶屋に出かけた。

そして木皿泉さんが書くドラマの台詞にたくさん励まされた。

最初のうちは、主人公の基子さんに感情移入をしていたのだけど、30歳を過ぎたあたりから、浅丘ルリ子さん演じる教授の生き方に惹かれた。

教授の生き様が実にカッコいいのだ。

今でも仲が良い「すいか」メンバー

 

おみかさんとすだち蕎麦。 #市川さん #蕎麦

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このドラマの役者さん全てそうだけど、全員この人じゃなきゃダメだと思うくらい配役がハマっていた。

ドラマが終わって10年以上経っているのに、こうやって当時のメンバーと会っているのは、演者の人にとっても特別なドラマだったんだろうな。

(市川実日子ちゃん、可愛すぎ!)

「すいか」のシナリオと10年後のお話

当たり前の生活

馬場チャン「ハヤカワの下宿、行った時さ、梅干しの種見て、泣けた」

基子「梅干しの種?」

馬場チャン「朝御飯、食べた後の食器にね、梅干しの種が、それぞれ、残ってて ー何か、それが、愛らしいって言うかつつましいって言うかー あ、生活するって、こういうことなんだなって、そう思ったら、泣けてきた」

基子「そんな、おおげさだよ」

馬場チャン「全然、おおげさじゃないよ」

基子「-」

馬場チャン「掃除機の音、ものすごく久しぶりだった。お茶碗やお皿が触れ合う音とか、庭に水をまいたり、台所で何かこしらえたり、それ皆で食べたりーみんな、私にないものだよ」

すいか 2 (河出文庫)

主人公の基子の同僚、小泉今日子さん演じる馬場チャンが会社のお金3億円を横領して逃走している中、久しぶりに基子と会って会話するシーン。

放送された当時から好きなシーンの一つだけど、年を重ねるごとにグッとくる。

今は母と猫と暮らしているけど、自分以外の生活音が聞こえると落ち着く。

そしてありがたいと思う。

それはこの恵まれた生活はいつか終わりが来るとわかっているから。

寿命で考えたら、おそらく私が母と猫を見送ることになるだろうけど、そうなったら今まで当たり前だった生活音が聞こえなくなり、そのありがたみが身に沁みるだろうなと思うと切ない。

だから毎日感謝して過ごしている。

このブログの名前の由来

これは教授の台詞なのだけど、この台詞って一番の名言じゃないかなと思うくらい気に入っている。

このブログの『忘れるために書くブログ』は、この台詞が由来となっている。 

10年後の物語

オマケとして書かれた10年後の物語、とても良かった。

読みながら涙が出たし、映像も全部浮かんだ。

ぜひドラマで見てみたいけど、難しいのかな?

女刑事生沢と馬場チャン

#13 道 逃げている馬場チャン。

生沢「待って」

馬場チャン「(待たない)」

生沢「(息切れ切れ)わたし、もう、ケーサツ、やめたから」

馬場チャン「(スピードを落とす)」

生沢「(足を止めて叫ぶ)わたし、農家に嫁ぐの。ハッサク作ってる家。もう手錠持ってないから」

馬場チャン「(立ち止まる)じゃあ、何で追いかけるのよ」

生沢「そっちが、逃げるから」

馬場チャン「追いかけてくるから逃げるんじゃない」

生沢「もう、追いかけることできなくなったけど、私、忘れないから」

馬場チャン「ー」

生沢「みんなが忘れてしまっても、私だけは絶対、あんたのこと忘れない」

馬場チャン「ー」

生沢「私が覚えているかぎり、あんたは世の中とつながってるんだからね」

馬場チャン「ー」

生沢「言いたかったの。それだけ」 

すいか 2 (河出文庫)

片桐はいりさん演じる女刑事生沢が馬場チャンに最後に語るシーン。

映像が浮かぶ。

そして泣きそうになってしまう。

あいかわらずの基子と絆

基子「いや、それは勘違い。あいかわらず独身の信金OL」

「そーなんだ」

基子「世間的に見たら、私たちって不幸なんでしょーかね」

「だろうね」

基子「そーでもないのに」

「どっちかというと幸せのよーな気がするよね」

 すいか 2 (河出文庫)

あいかわらずの2人。

なんだかホッとした(笑)

これ以上はネタバレになってしまうので書くのは控えるけど、「すいか」が好きだった人にはおススメの本。