【書評】『局アナ安住紳一郎』を読んだ

局アナ 安住紳一郎を読んだ。

のっけから面白い

02年11月号から05年6月号までテレビ誌『テレパル エフ』に連載したものをまとめたものです。 掲載当時の文章そのままです。そのため恥ずかしいほどの勘違い、若さゆえの傲慢さなどが目につきます。自分の忙しさを遠回しに自慢していたり、確実に心の病にかかっているときのものもあります。

(引用局アナ 安住紳一郎

 心の病にもかかるよね、TBSにいたら(笑)

久米さんへの想い

アナウンサー最後のオンエアを録画して収集する軽い変態の安住さん。

各局アナウンサー諸氏が担当替えになる番組で見せる最後の姿・コメントを録画し収集したものだ。私は軽い変態なのか?いや、仕事熱心ということにしてもらおう。

 (引用局アナ 安住紳一郎

そんな安住さんがコレクションの特等席に置いているのが「ニュースステーション」の久米宏さんの最終回。

タレントや、記者出身のキャスター全盛の時代にあって、アナウンサー出身の久米さんの活躍がどれだけ後輩の励みになっているか知れない。かつて久米さんは「私はジャーナリストになりたいとは思わない。私はあくまで司会者でいたい」との発言をした。この一言で、多くの局アナが救われた。私たち局アナはどれだけ頑張ってもジャーナリストにはなりきれないんだということをいつも体で感じている。

 (引用局アナ 安住紳一郎

久米さんの存在で安住さんが救われていたのだと、この本を読んで初めて知った。

以前久米さんと池上彰さんの対談番組を見たとき、久米さんが理想のキャスター像を語っていた。 

このニュースは嬉しいニュースだって、キャスターが感じるんではないんですよね。見てる人が感じるべきことなんです。このニュースは辛いとか大変だっていうのは。ただ、今やっぱりキャスターが、女性の方が、自分が感じてるんだってことを言っちゃう人が多いんですよね。それは、見てる人が感じてもらうことがあなたの仕事だろうって僕は思うんですけど。

番組の中で久米さんは上記のことを語られていて、本当にそうだと思ったのを思い出した。

久米さんが「私はあくまで司会者でいたい」という真意がわかるコメント。

私もニュースを見るなら、見る側がどう感じるかを優先して仕事をするアナウンサーの番組が見たい。

原動力は怒り?

『短気は損気』 そんなことはわかっている。しかし『怒り』から生じるエネルギーが、どうも人より多く発生するらしい。

(引用局アナ 安住紳一郎

この本には、幼い頃からの短気エピソードが書かれているのだけど、安住さんのあの目が笑っていない感じとか、どことなく漂う闇のオーラの根源とも感じられる短気は損気エピソードはおもしろかった。

そしてTBSで闘っている安住さんの原動力は、「怒り」なのだろう。

「一生懸命仕事をしたからといって、自動的に幸せになれるわけではありません」。新社会人の皆さんへ、求められていないけど一方的に贈る言葉です。

(引用局アナ 安住紳一郎

安東アナのこと


【吉田豪】安東弘樹アナの壮絶な生い立ちを語る!!

→これを聞いて、安東アナにも興味がある私だけど、安住さんのエッセイにも安東アナのことは書かれていた。

「俺は仲間が欲しい」そんなメールを深夜、血迷って安東弘樹アナウンサーに送ってしまったことがあります。翌朝、「俺はいつでもお前のそばにいるよ」というメールが返ってきていて、慌てたことも今では良い思ひ出ぽろぽろ。

(引用局アナ 安住紳一郎

安東さんは3月いっぱいでTBSを退社してフリーになってしまった。

テレビが斜陽産業になる日は近い

矛盾や過剰な要求にやりきれなくなるときもあるが、逆に局アナだからこそ会社や同僚に関わりあえることもたくさんある。(中略)ITや新通信システムに押されテレビが斜陽産業になる日は近い。しかし、テレビはまだ戦えると信じている。(中略)私が会社を辞めない理由は独立資金の不足だけではないのです。しかし、もし近い将来フリー転身の記事を見てしまったら、『ああ、事情が変わったんだなぁ』と思って笑ってください。

 (引用局アナ 安住紳一郎

安住さんならフリーでも仕事に困ることはないだろうけど、視聴者から求められなくなったらこの仕事は終わりという覚悟を持ってやっているので住宅ローンも組まないとか(この本が出されたのは10年以上も前なので、今はわからないけど)、「アナウンサー」という仕事にかける意気込みは普通のサラリーマンとは違う印象を受けた。

最近の安住さんの話も読んでみたいな。

また連載してほしい。