猫組長のアンダー・プロトコル: 政財暴一体で600億円稼いだ男の錬金哲学を読んだ。
猫組長は元山口組系組長。
猫組長の本は初めて読んだのだけど、アンダーグラウンドの世界から見るファイナンスはおもしろかった。
仮想通貨について
「仮想通貨」という総称の中に投機目的の仮想通貨と、決算用の仮想通貨が混在していることを忘れてはいけない。
1年半前に仮想通貨の仕組みに興味があって書いた記事。
前職で海外送金の手配をやっていたことがあるのだけど、海外送金って手数料が高いなぁといつも思っていた。
仮想通貨の送金の手数料はかなり安く、決算用として魅力のある通貨と思っていつか買ってみようとビットコインについて調べたのだけど、あれよあれよという間に値上がりして、ピーク時は私が調べたときから25倍もの値になっていた。
私は結局買うことはなかったのだけど、友人の旦那さまはもっと安かったときに買っていたそうで、バブルが来る前に売ってしまったことをかなり悔やんでいた。
バブルの時に売れば家が買えたそうだ(笑)
そもそも仮想通貨とは、インターネット上でやりとりできる通貨のことで、国が保証する法定通貨(円やドルなど)とは違い、専門の取引所で法定通貨と交換できる。
(公的な発行体や管理者がいないので、全世界に600種類以上の仮想通貨が存在しているといわれている)
公的な管理者がいないにも関わらず仮想通貨が維持できているのには、ブロックチェーンという仕組みがあるためで、ブロックチェーンとは、取引の記録をネット上で管理する技術のこと。
(複数のコンピューターで多くの参加者が取引記録を共有することで互いに監視して、正しい情報を蓄積する仕組み)
猫組長の言う通り、今の仮想通貨は投機目的としての売買で値動きが激しいので、私はしばらく買わない。
ビットコインでマンションの支払いを認めるところも出てきたよう。
(お金がぐるぐる回るな~)
株価が高額になったところで、一般投資家という名の素人をはめ込み、売り抜ければ利益は最大になる。暴落が進む今でも、ネット上には「ビットコインはまだ戻る」という文言が躍っているが、最後の汁をすするために「カモ」を呼び込む言葉にしか私には聞こえない。
ビットコインバブルは弾けたけど、ブロックチェーンの仕組みはおもしろそうなので、また別の機会に調べてみたい。
暴力と経済
何より驚くのは、企業からいつ、どういう方法で株価を上げるから、こうやってくださいというレクチャーまで受けること。まさに出来レースである。先輩たちと4人で仕手をして、儲けた金をバブル崩壊で溶かして地獄を味わってきた私は、「なんだこんなもんか、俺は今まで何をやっていたんだ。真面目に株を買って、えらい目に遭って……こいつら紙きれ刷って50億も60億も集めやがって……裏ではヤクザに儲けさせやがって」と、愕然とすることになった。
やっぱ、こういうことも裏ではあるよねぇ。
きれいごとではない魑魅魍魎渦巻く世界だものね。
テロ資金はどこから
猫組長は9・11のニュースを聞いて興味を覚えたのはマネーの部分だったそう。
(ちなみに中東のテロ資金はユーロダラー市場*1で証券化され、ケイマンやヴァージンを経てアメリカ本土へ持ち込まれたそう)
そしてアメリカはテロ以降、「愛国者法」を定め、その中に「テロリズムを予防するための資金洗浄対策」を設けるのだけど、これ、アメリカはすべての国の銀行の口座を勝手に凍結できるというとんでもない法律らしい。
(「愛国者法」は2015年に一部制限が加えられて「米国自由法」になっているとのこと)
SWIFTには誰がいつ、誰宛にどこの銀行でいくらどういう風に送ったかという膨大な世界中の送金記録が入っているのだが、9・11以降、それをアメリカがこじ開けていたということは、アメリカはありとあらゆる送金を把握しているということである。人権さえ躊躇している行為で普通に考えれば許されないが、この時はアメリカの力で押し切った。最初は9・11事件の捜査目的で開けたのだが、「対策」ということであらゆるテロリストや、犯罪者の金の流れを監視しているのだ。
恥ずかしながら、この本を読んで初めて知ったのだけど、アメリカさん横暴やね(._.)
原油を売る
猫組長が個人で原油を売るエピソードもおもしろかった。
個人で原油の売買をするために、ブルネイ、サウジアラビア、危険なイエメンまで乗り込むのだから行動力がハンパない。
ビジネスでの成功に必要なのは迅速な決断と行動だ。少なくとも私はそうして生きてきたし、おそらく死ぬまで変わらない。仕事で一番ムダな行為は、長時間の会議と電話。
ちなみに石油取引って、ドルでしかできないそう。
(知らなかった!)
しかも軍事用の武器、穀物もドルが基本だそう。
ドルの動きを正しく理解するということは世界の動きを正しく理解することと同じことなのだ。
外国為替市場で取引される通貨の85%はドルを介在した取引。
ドルは最強通貨。
米国市場で取引することのアドバンテージはUSDだよ。
— 猫組長 (@nekokumicho) 2018年5月12日
経済規模の急速な拡大によってほどなく中国が世界の覇権国となり、世界は中国を中心としたものになるーーこんな報道や、評論を読むたびに私は首を傾げる。中国が「ドル」を刷れるのか。覇権国になるということは「元」が「ドル」を凌駕し、新たな「基軸通貨」になるということである。それは1944年から続く世界構造の転換を意味するのだ。そんなことは大規模戦争でもない限り起こりえないし、ドルの支配する世界で大規模戦争は起こりにくい。
中国は戦争の準備でもしてるんじゃないかというほど燃料集めてるな。
— 猫組長 (@nekokumicho) 2018年5月9日
ちなみに猫組長はこの石油ビジネスで最終的に知らぬ間にテロリストの資金を扱っていて、アメリカに制裁として口座を凍結されビジネスもゼロになってしまったそうだが、獲得した国際金融のスキルは金では買うことはできないほど貴重なものだとこの本の中で語っている。
国際金融の叫び
SWIFT送金などアメリカの監視の呪縛から逃れる方法として、証券の活用がますます増えている。(中略)こうした資金移転におけるフェイクマネーは非常に近い時間帯で、主役の座を仮想通貨に取って代わられることだろう。そして仮想通貨に規制が入り、証券と仮想通貨の棲み分けが起こると私は考えている。
ちなみにカナダやヨーロッパの国々は仮想通貨に対して好意的な政策をとっているそう。
イランではリヤルの価値が半年で1/4も失われ、イラン国民は仮想通貨で国外に25億ドル送金したそう。
(イランの中央銀行は4月に国内の金融機関に対して、仮想通貨の取引を禁止している)
最先端の金融スキルとはまさに資金移動のスキル。
猫組長が語るように、資金移動の手段はこれからは証券に限らず仮想通貨に主役にとって代わりそうな勢い。
仮想通貨で海外にある別人の口座に送って、現地で現金化したものを還流させればマネロン完了だから、ビットフライヤーは認識できないね。そこが仮想通貨の問題点で、これから規制されるところ。
— 猫組長 (@nekokumicho) 2018年5月14日
結局お金は形を変えてぐるぐる世界を回って、あるところでは減って、あるところでは倍々ゲームのように増えて、延々と回り続けるのよね。
経済(お金)、政治、軍事力
世界一の国になるには、世界一の暴力と世界で一番強い貨幣、そしてそれを運用する政治システムが必要なのだ。
みのもんた「拘束されてた米国人は帰ってきたが日本の拉致被害者は帰ってきてない。忸怩たる思いが」
— ブルー (@blue_kbx) 2018年5月12日
青山繁晴「何で韓国系米国人だけが帰って来れたかというと米国の軍事的圧力が効いたから。日本は軍事的圧力なしで話し合いの40年。海外出張から帰ってくると国際社会と日本の落差にびっくりする」 pic.twitter.com/FBWx9dx8Wt
日本も軍事力強化しないと。
常識が通用しない外国諸国と対等に渡り合うには、いつまでもお人好しでいてはいけない。
大変勉強になる本でした。
*1:ユーロダラーは,1950年代に入って米ソ間の冷戦が激化するのにともない,米ドル資金をアメリカで運用していたソ連・東欧の中央銀行がアメリカによる資産凍結を懸念してヨーロッパの銀行に預け替えたのが起源である。当時いわゆる〈ドル不足〉に悩むヨーロッパでは,銀行を中心にしてこの資金を相互に融通し合い,その結果,卓越した金融ファシリティを有するロンドン金融市場を中心にして,ユーロダラー市場と呼ばれる一種の外貨資金市場が成立した)