笑福亭鶴瓶論 (新潮新書)を読んだ。
笑福亭鶴瓶というと、私はナイナイのオールナイトニッポンのコーナー「悪い人の夢」が浮かぶ。
「いい人」というイメージの笑福亭鶴瓶には一方で「悪瓶」という異名がある。これは、『ナインティナインのオールナイトニッポン』(ニッポン放送)での「大笑福亭悪びん」というコーナーが始まりだった。1996年の『笑っていいとも!特大号』の打ち上げで酔った鶴瓶が周りの出演者たちに暴言を吐きまくった。そのエピソードを語るうちにできたコーナーだった。そこで本当は悪い鶴瓶のエピソードが語られるようになった。
(引用 笑福亭鶴瓶論 (新潮新書)
大学生の頃、私はナイナイのオールナイトニッポンのヘビーリスナーだった。
緊張する矢部浩之に鶴瓶はアドバイスをした。
「笑ろとけばええのや」
矢部はそのときの鶴瓶の目が笑っていないことにゾッとした。
(引用 笑福亭鶴瓶論 (新潮新書)
このコーナーのせいか、今でも私の頭の中には「鶴瓶=悪瓶」とインプットされている。
私は「いろもん」(ウッチャンナンチャンと鶴瓶さんが司会のトーク番組。ウッチャンナンチャンの次は今田耕司と東野幸治が司会を引き継いだ)が好きでよく見ていたのだけど、この番組や「27時間テレビ」などで若手に突っ込まれたり蹴られたりしている鶴瓶さんが最高におもしろい。
(これめっちゃおもろいw)
この本は鶴瓶さんのエッセイではなく、過去のインタビューやエピソードをまとめてあるのだけど、本人が語る文でなく第三者が客観的に語るからこそのおもしろさがある本だった。
「オモロイこと」に消化する
台風になればトタンの壁が飛んでいき、それを拾い集めて家がちょっとずつ大きくなっていく家があったり、突然、「インザスカーイ!」などと意味不明な英語で話しかけてくる頭のおかしなオジサンがいたり、もうハチャメチャだった。それを「ツライこと」と捉えることもできるが、鶴瓶の場合、それを全部「オモロイこと」として消化していった。
(引用 笑福亭鶴瓶論 (新潮新書)
鶴瓶さんは前向きになれないと悩む人に、「美意の安配」という故事の話しをするそうだ。
「すべての出来事は全部上が決めてはること」
(→「美意の安配」の話はこちらのブログに書かれてます)
大変なことや、つらい、苦しいことは起こる。
けれどそれは、次によくなるための「案配」にすぎないということ。
鶴瓶さんはこの故事の話から、「悪いこともいいことも決まっているから、悪いときにそんなに落ち込まんでもええよ」と話している。
ええ話やなぁ~。
ブリーフ一丁でめちゃくちゃしているおっちゃんの言葉とは思えない。
あこがれられない男
あるとき、内村光良と東野幸治がエレベーターで一緒になったことがある。そのとき、内村がしみじみと言った。
「良い人だけどあこがれないなぁ・・・・」
笑福亭鶴瓶は誰もが認める大御所芸人である。豪邸に住み、別荘も建てた。芸人として大金と夢を掴んだ。
(引用 笑福亭鶴瓶論 (新潮新書)
憧れられないのもいいと思う。
失望されることもないのだから。
ケンカ早かった時代の話、トラブルになるとわかっていても「人間」というものにどんどん関わっていく話など、読まなければ知ることのなかった鶴瓶師匠の人となりがわかる本だった。
ノンフィクションってやっぱりおもしろい。
人に歴史あり。
「もっとおもろなりたい!」と鶴瓶に言わせた張本人であるダウンタウンの松本人志は50歳を超えた今、生まれ変わったら誰になりたいかと問われ「鶴瓶さん」だと答えている。「仙人みたいな人。ボクシングで言うと『殴ってこい』と。俺、ボッコボコにすんねんけど勝った気がしない(笑)。なんなんでしょう、あの人。お釈迦様みたい」
(引用 笑福亭鶴瓶論 (新潮新書)