「よいか、悪いか」「好きか、嫌いか」といった感情に左右される思考は「理論」とは呼べない。理論は数字やデータに左右されるべきものだ。ところが、評論家やエコノミストのなかにも、感情剥き出しの暴論・空論を吐く輩がいる。(中略)さらには、そうした世の中の「議論」の構造と、ロジックとデータから導き出された客観的な「事実」の双方を知れば、悲観論渦巻く現在の日本が世界のなかでどのくらいのポジションに位置しているか、いま歩んでいる道は正しいのか、国家の将来はどのようなものになるか、ということへの解も、おのずと浮かびあがるはずだ。
髙橋洋一さんの本を読むのはこれが4冊目だけど、毎回勉強させてもらっている。
今日はこの本を読んで気になったことをまとめてみる。
アメリカ
利上げ
ただ、トランプ大統領の公約は雇用重視であり、彼自身が不動産業出身であることを考え合わせれば、生来的に低金利を好むと見てよいのではないか。
FRBがトランプの政策に協力すれば、当面のトランプ政権は積極財政と金融緩和ということになるだろうと髙橋さんは読んでいる。
しかし今のところFRBは年内2回の利上げが適切としており、利上げのペースが遅くなる可能性は低そう。
ビジネスの作法を貫くトランプ
政治には「素人」でも、百戦錬磨の「ビジネスマン」だったトランプ大統領は、政府の権力の強さを嫌というほど思い知らされていたはずだ。その政府の力を、自身の公約を果たすための交渉に使ってくるのは、当然の戦術であると認識したほうがよい。
トランプをなめていた中国は大変なことになっている。
トランプが当選した際、いち早く会いに行った安倍首相グッジョブ!
これは外務官僚の能力ではなく、安倍首相自身の人脈を活かした結果とのこと。
トランプと安倍首相を仲介した人物によると、トランプは賢く、苦境のときに助けてくれた恩義は忘れない一面もあるとのこと。
髙橋さんは、ドライなビジネスマンのイメージだけでトランプの思考を見極めようとするのは判断を誤ることになるかもしれないと言っている。
欧州
イギリスEU離脱
今後、EU離脱に向けた最終案をイギリス議会にかける過程で、イギリス政府の態度がソフト・ブレグジットになるのか、それともハード・ブレグジットになるのかによって、イギリス経済やヨーロッパ経済の長期的な展望は変わってくる。
イギリスは今のところ「合意なき離脱」すなわちハード・ブレグジットの可能性が高いかな?
ロイターによると、イギリスがハード・ブレグジットになった場合、輸出品の関税率が高くなり輸出業者が痛手を負うことになるとある。
他には投資の落ち込み、生産性の鈍化、移民減少による労働力不足を上げている。
そしてこの度イギリス政府が発表したハード・ブレグジットに備える文書によると、深刻な影響を受ける医薬品は不足に備えて6週間分備蓄を備えるように製薬会社に要請したとのこと。
イギリス経済が弱くなればドイツやフランスといったEU主要国の政治的プレゼンスは高まるはずだが、それでEUが世界経済の勝者になるわけではないと髙橋さんは語っている。
ヨーロッパ統一というシナリオは、大きな曲がり角を迎えている。1999年にノーベル経済学賞を受賞したロバート・マンデルは、「最適通貨圏理論」において、単一の通貨で維持できる経済範囲は決まっていると指摘した。(中略)単一の経済政策でカバーするには、いまのEU圏は大きすぎる。ユーロを使うギリシャやポルトガルの経済が危機的状況に至ったのは、EU経済圏が「最適」な規模を超えてしまったからだ。
長い目で見れば、イギリスのEU離脱はヨーロッパの経済圏が最適な規模へと縮小していくための大きな一歩になるというのが髙橋さんの意見。
イギリスはTPPに入りたいだろうねぇ。
EUはひとまずアメリカとの貿易戦争は回避。
(中国ではなくアメリカさんにつきまっせ~ってことかな?)
トルコ
リラの下落で懸念すべきは、トルコよりも証券残高の多いドイツやイタリアだろう。
— 猫組長 (@nekokumicho) 2018年8月13日
ドイツやイタリアの銀行には、トルコが発行したクルゼイロ時代のLTN(長期国債)を原資にしてユーロ建て証券をジャブジャブ作ってるんだけど、その残高と為替考えたら震える。
— 猫組長 (@nekokumicho) 2018年8月13日
英銀バークレイズのトレーダー、トルコ債で21億円の損失https://t.co/7WWUTD7XXG pic.twitter.com/DxNOniWqzZ
— ブルームバーグニュース日本語版 (@BloombergJapan) 2018年8月16日
トルコは長年アメリカを利用してきた
— Donald Trump 日本語訳 (@Mishimadou) 2018年8月17日
彼らは今、わが国のキリスト教牧師を拘留しており、私はわが国を代表してこの偉大な愛国者の人質の解放を求めなくてはならない
我々は無実の者の解放に金を払うことはないが、トルコを相手にすることは少なくなる https://t.co/T8Angvje9h
トルコは、2年前のクーデター事件に関係したとする米国人牧師を拘束している。それに対して、米国はトルコ閣僚の資産凍結を決めた。さらに、リラ安に伴い、トルコから輸入する鉄鋼などの関税を引き上げることも表明した。米国の対トルコ投資・与信はそれほど多くない。欧州の対トルコのほうがはるかに大きいので、米国はリラ安の影響を受けにくく、トルコ問題は欧州への打撃が大きいのが実情だ。この意味では、新興国とはいえ世界経済への影響を過小に評価することはできないだろう。
(引用 【日本の解き方】トルコリラ暴落の政治的背景 トランプ大統領流の揺さぶり…過小評価できない世界経済への打撃 (1/2ページ) - zakzak)
#虎8 中東、gdgdやなー
— ひらぎ (@hiragi1123) 2018年8月27日
イエメンから欧州に行くスエズ運河を通る石油タンカーが狙われてるんかー
それだと、ロシアのガスに頼る事になるだろうから、ロシアの力が強まる可能性があるなー
…それが狙いかな?
イエメンのフーシ派の背景に中国とロシアがいるっていうのは
欧州はしばらく安定しなさそうだな~。
中国
自国の統計を信じない中国の政治家たち
恐ろしいことに中国の政治家たちすら、国の統計を信頼していない。これは有名な話だが、李克強首相は自国が公表するGDP統計を信じないで、電力と鉄道貨物と融資の三統計で経済成長を判断しているーーというアメリカ国務省のメモが告発サイトのウィキリークスに掲載された。
中国政府の発表する数字は信用できないというのは有名な話。
髙橋さんは、電力・鉄道貨物・融資のデータだけでは実体経済には迫れないと言っている。
信頼できるデータは中国の貿易統計だという。
各国が公表している対中国貿易の統計データの数字を合算すれば、中国の輸出入の現実に合致するので、さすがに中国も貿易統計に虚偽のデータを発表することはできないというのが髙橋さんの考える根拠。
中国の輸出・輸入額は2014年をピークに下降している。
髙橋さんはこれらの数字から、中国経済が内需・外需ともに不振であると読んでいる。
輸入は基本的に可処分所得*1に左右されるので、その動向はGDPの動きと連動する。
輸入が下降しているなら、GDPも伸び悩んでいると見るのが中国経済に対する違和感のない推察と髙橋さんは語っている。
「中国はGDPが順調に伸びている」というのは胡散臭い。
経済成長息切れ
資本・投資を自由化すれば、国有企業改革も進む。電電公社、専売公社、国鉄という日本の三公社が民営化され、NTT、JT、JRになったのは1980年代のことだ。それに対して中国は、工業化を国有企業が牽引し、いくつかの優良企業も現れつつはあるが、資本・投資の自由化はほぼ不可能である、中国の第二次産業就業者比率は30%程度しかなく、35%以上に達している自由競争の資本主義成長国に比べると、十分に工業化が進展していないことがわかる。(中略)しかし、「早すぎる脱工業化」は経済成長の息切れを引き起こす。このままでは、中国は中進国の壁を越えられなかったマレーシア、タイ、アルゼンチン、メキシコといった成長停滞国の二の舞になる確率が高い。
資本取引の自由化は為替の自由化と表裏一体。
資本取引を自由化すれば国有企業の民営化につながり、経済的な自由を獲得すれば政党選択という自由を国民は求めるようになる。
一党独裁体制の中国共産党指導者層がそんな危険なことをするはずはないとのこと。
そもそも社会主義国が経済で世界一になろうだなんて無理な話。
筆者がプリンストン大学で師事したマイケル・ドイン教授は、カントの思想を現代に復活させた「民主的平和論」の提唱者だ。そこで学んだことを一言で表せば、「民主主義国家同士のあいだでは戦争はほとんど起こらない」ということになる。(中略)中国や北朝鮮をはじめとして、民主化が遅れている国がアジアには多い。「民主主義」を掲げつつ、さっぱり民主化されていない国もいくつもある。そうした国家は話し合いで平和を築くよりも、虚勢を張って存在感を示そうとする。だから武力が増強される。そして、国益を満たすためなら、最後は力づくで目的を果そうとする。
中国には平和憲法はなく、国家より共産党が上位にある。
独裁政党に操られる、国際社会の「理」が通じない大国と日本は同じアジアの一員として付き合っていかなければならないと髙橋さんは言っているのだけど、お隣の国も含め、ほんとやっかいな国が近くにある日本って・・・。
ノーベル賞経済学者であるミルトン・フリードマンは、経済的自由と政治的自由は密接な関係にあり、経済的自由のためには資本主義の市場が必要だと説いている。政治的自由のない中国の経済発展が行き詰まるのは、フリードマンの理論でも説明できる。
資本流出歯止めかからず
外貨準備高も下降線。
中国から資本が海外へ流出している。
しかし、中国は政府と民間の部門が曖昧で外貨準備の概念も明確ではないため、この数字で評価・判断をくだすのは難しいとのこと。
とは言え、この前はじけたビットコインバブルや中国人観光客の爆買いを見ると、中国の富裕層が資金を海外に流出させているのは想像できる。
中国共産党の身内を海外に留学させ、生活費の仕送りと銘打って海外に資金を逃がすというのも有名な話。
私の友人に日本に留学に来た中国人の友だちがいるそうだが、相当な金持ちだと言っていた。
中国でビジネスマン、海外移住ブーム。民間企業幹部が拘束、懲役20年他、パスポートを会社に預けなければならないなど不安(BS1国際報道2018 )。手遅れにならないうちに脱出したほうがよい。日本企業も社員に注意すべき。
— 加地慶子 (@twikeiko) 2018年5月17日
国際政治の歴史に鑑みれば、「内」と「外」が交わるときにはパワーバランスが大きく崩れる確率が高くなる。かつての冷戦構造はすでにないが、グローバル経済を牽引してきた西側の超大国が内向きになり、グローバル経済に乗り遅れていた東側の超大国が外向きになっている状況は、間違いなく国際社会の基盤に地殻変動を引き起こす。これは極めて合理的な推察である。
世界は今、ひとつの転換期にいるのかも。
*1:給与やボーナスなどの個人所得から、税金や社会保険料などを差し引いた残りの手取り収入。自分の意思で使える部分。個人の購買力を測る際のひとつの目安。