小林聡美さんのていだん (単行本)を読んだ。
内容紹介
【鼎談】(ていだん)とは、三人が向かい合って話をすることである――。本書は雑誌『婦人公論』で1年半にわたり掲載された女優・小林聡美による大人気連載「いいじゃないの三人ならば」を1冊にまとめたもの。さまざまなゲスト二人と小林聡美が語り合う、読むと気持ちがちょっと豊かになる鼎談集。
小林聡美だからこそ聞き出せた、誰もが知るあの人たちの意外な素顔。【ゲスト】 井上陽水、川上未映子/小泉武夫、飯島奈美/もたいまさこ、片桐はいり/松岡享子、群ようこ/柳家小三治、酒井順子/長塚圭史、西加奈子/加瀬亮、前田敦子/南伸坊、江戸家小猫/大橋歩、小野塚秋良/宇多喜代子、森下圭子/市川実和子、市川実日子/坂崎千春、坂本美雨/大貫妙子、畠山晶/板谷由夏、平岩紙/白旗眞生、野村友里/役所広司、光石研/甲斐信枝、本上まなみ/石田ゆり子、中谷百里
読み終わったあと、「やっぱり小林聡美さん好き~」と思った。
どのゲストの方のていだんもおもしろかったのだけど、今回はその中でも良いと思ったものをまとておく。
井上陽水、川上未映子
10年後は生きている?
井上 でも60代になると、え?10年後?生きてる?とかね、そういう範疇になって…。ですから何を言いたいかと申しますとね、このテーマ(「10年後の私たち」)を考えた方は、高齢者に対する配慮が若干…。
小林 プッ、若干、ね!
井上 若干、配慮が足りないと言いますか。
川上 でもでもでも(笑)、まだ絶対に生きて…。
小林 いや、たしかに50歳を過ぎると、いつ何が起こるかわからないという覚悟はありますよ。
私、今年で40歳なんですけど、30代半ばくらいから「自分が死んだ後」ということを意識し始めて。
私の発言や行動とかが、「30代中盤なのにもう終活でもしてんの?」などと言われることもありまして。
おそらく、自分の父親が50歳で亡くなったことが大きく関係していると思うのだけど、「人生いつ何が起きるかわからない」という危機感みたいなものは、父が亡くなってから深く心に刻まれているのだと思います。
なので、おそらく50歳になったとき、「あぁ、自分は50歳まで生きられた」とか感慨深く思ったりしそう。
もたいまさこ、片桐はいり
やりたくないことをやらないだけです
片桐 私、今でこそ腑に落ちるセリフがあるんです。あとからフィンランドにやって来たマサコさんが、食堂をやっているサチエさんと、彼女を手伝っているミドリに、「あなたたち、好きなことだけやってらしていいわねえ」と言う場面がありますよね。
小林 ありますね。
片桐 それに対してサチエさんは、「やりたくないことをやらないだけです」と返すんです。そのとき、ミドリはサチエさんの横で「ウン、ウン」と、自分の手柄じゃないのについでに自分も褒められたような、ちょっと満足気な表情をしてるんですよね。私がそれを意図して演じたかどうかは覚えていないのですが…。あの場面、いつも自分で見て、「面白いな、ミドリって人は」と笑っちゃう。
小林 というと?
片桐 つまり、あのときの私はミドリと同じ心境というか、サチエさんのセリフがちゃんと理解できてなかった。「好きなことだけやりたい」というガツガツした気持ちならわかりやすいんだけど、「やりたくないことはやらない」。その言葉は、なんかすごい。すごいけど、自分のなかでは腑に落ちないというか。そのくせ背伸びしてうなずいてる。(笑)
もたい うんうん。
片桐 「言ってることはわかるけど、世の中そんなふうには生きられないよね」と。「欲張らない」という感覚がわからなかったんです。世の中もまだまだ欲望がギラギラしていたし、自分も若かったんだと思います。でも聡美さんはあのセリフ、理解しておっしゃってたんでしょ?
小林 私は…わかりましたよ。
懐かしいなぁ。
この映画を初めて観た時はまだ20代で、片桐さんがおっしゃるように、「やりたくないことはやらない」という言葉が腑に落ちないというか、そもそも自分のやりたくないことがまだよくわかってなかった時だった。
そして、「言うほど簡単にできないでしょ」と、そもそも無理だと思っているから心に響かなかったのかもしれないけど、今まさに「やりたくないことはやらない」人生を送っている私は、サチエさんのこの言葉はしっくりくる。
「やりたくないことはやらない」と、自分の心の中で決めちゃう。
だからといって「やりたいことだけやっている」人生でもないのだけど、「これだけはやりたくない」ということは、自分の中でだいたいわかってきたので、「やりたくないことをやらないためには何をすればいいか?」という考え方に30代後半から変わってきた。
小野塚秋良/宇多喜代子
集中しないところからは何も生まれない
小野塚 わかった。やっぱり、センスって経験の蓄積!たくさん着て、たくさんバカなことをやって…という蓄積を経て、その人がバッと出てきたときに、ああ、センスがいいね、となる。
小林 自分というものに向き合って、自分の味を見つければ、それがその人のセンスになる。ちゃんとガッツリ、集中して向き合って。
小野塚 そう!集中していないところからは何も生まれない。面白がらないと。
小林 人のまねをするというよりも、自分で面白がれるかどうか。
どんなときも、面白がれるようになりたい。
楽しいではなく、面白がる。
私の40代のテーマは、「やりたくないことはやらない」「なんでも面白がる」に決まり!