美術家 篠田桃紅さんの一〇三歳になってわかったこと 人生は一人でも面白い (幻冬舎文庫)を読んだ。
以前テレビで拝見した日野原さんとの対談で初めて篠田さんのことを知ったのだけど、篠田さんの佇まいが強烈に印象に残った。
日野原重明×篠田桃紅 104歳の医師・日野原重明と103歳の美術家・篠田桃紅、奇跡の顔合わせによる痛快トーク!生涯現役を貫く秘けつ、悩める人々に授ける「人生百年の知恵」まで語り尽くす 2016010
篠田さんのことを知りたいとずっと前に買った篠田さんの本を、このたびついに読了。
美術家 篠田桃紅(しのだとうこう)
篠田さんは日本の美術家で、幼い頃にお父さんより書の手ほどきを受ける。
篠田さんのお父さんは篠田さんが結婚するよう遺言まで残したが、篠田さんは生涯独身。
24歳で家を出て自活し、書を教えながら生計をたてる。
第二次世界大戦後、43歳で単身アメリカに渡る。
アメリカの気候は墨は合わないと2年で帰国。
女性の権利も今ほど自由ではなかった時代に、随分と革新的な生き方をされている。
百歳はこの世の治外法権
この歳になると、誰とも対立することはありませんし、誰も私とは対立したくない。百歳はこの世の治外法権です。
篠田さんは自分の意に染まらないことはしないようにしていて、無理はしないとおっしゃっている。
だからといって、誰かに何かを言われるでもなく、周りに咎める人もいない。
「百歳はこの世の治外法権」
なんて粋な言葉。
自由という熟語は、自らに由ると書きますが、私は自らに由って生きていると実感しています。自らに由っていますから、孤独で寂しいという思いはありません。むしろ、気楽で平和です。
古代の「人」は一人で立っていた
人に対して、過度な期待も愛情も憎しみも持ちません。そもそも、人には、介入するものではない、と思っています。過度な期待を相手に抱けば、その人の負担になるかもしれません。ゆきすぎた愛情を注げば、その人の迷惑にしかなりません。
この本の中でとても共感した内容の一つ。
若かりし頃の自分に聞かせたい。
篠田さんによると、古来の甲骨文字の「人」という字は、一人で立っているそう。
この姿は人の立った側身形であり、他の獣(けもの)に比べて二本足で立ち、自由に歩行できる姿を表し、また全身が微妙な線で画かれているのは、身体の屈伸が自由に出来ることを表しています。
恋人、親子、夫婦の間でも、相手を自分の思い通りにしようと思うところから、衝突が生まれたりもしますしね。
漢字の「人」のお互い支え合う形もいいけど、私は古代の一人で立っている「人」が好き。
無駄のある人生は1+1を10にも20にもする
無駄にこそ、次のなにかが兆しています。用を足しているときは、目的を遂行することに気をとらわれていますから、兆しには気がつかないものです。無駄はとても大事です。無駄が多くならなければ、だめです。(中略)時間でもお金でも、用だけをきっちり済ませる人生は、1+1=2の人生です。無駄のある人生は、1+1を10にも20にもすることができます。
篠田さんはつまらないものを買ってしまった時は後悔しないようにしているそうで、無駄はよくなる必然だと思っているそう。
後悔は体に良くなさそうだし、この考え方も篠田さんの長生きの秘訣かな?
自分の心が決める
豊かになれば人は幸せになれると、人類共通して思ってきましたが、それもまた違ったようです。私もずいぶん裕福な人を見てきましたが、裕福だから幸福だとは思えませんでした。かといって、極度な貧乏もまた不幸です。それなら、一体どうしたら、人にとって一番幸福なのかと考えると、わけがわからなくなります。どのように生きたら幸福なのか、「黄金の法則」はないのでしょうか。自分の心が決める以外に、方法はないと思います。この程度で私はちょうどいい、と自分の心が思えることが一番いいと思います。
これですよね。
誰になんと言われようと、自分が幸せだと思えば、人からどう思われようが関係ない。
それには人の基準、価値観でなく、自分の「ちょうどいい」を見つけること。
私はこの「ちょうどいい」を見つけるのに、30年以上かかってしまった。
ずいぶんと遠回りしてきたようにも思うけど、今とても穏やかで幸せな人生を送れているので、その遠回りも悪くはなかったと思う。
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