- 「奇跡の成長」の出発点に見るウソの数々
- 高度経済成長はなぜ実現したのか?
- 奇跡の終焉と「狂乱物価」の正体
- プラザ合意は日本を貶める罠だったのか?
- 「バブル経済」を引き起こした主犯は誰だ?
- 不純な「日銀法改正」と、痛恨の「失われた二十年」
- まとめ
戦後経済史は嘘ばかり 日本の未来を読み解く正しい視点 PHP新書を読んだ。
冒頭で述べたように、過去の事象について間違った認識を持っていると、それに影響されて、現在の状況を正しく見ることができなくなります。(中略)とりわけ日本では、そのことは十分すぎるほど十分に気をつけて自分自身で知的武装をしておかねばなりません。なぜなら、この国では不思議なことに、間違ったことを主張したり、当たらない予測を繰り返しているエコノミストや経済学者が、いつまでも淘汰されずに主張を繰り返していく傾向があるからです。出版社やメディアの人たちに聞くと、「いやあ、あの先生の本は売れますから」「人気があって、視聴率がとれますから」などというのですが、どう考えても間違っている主張が、売れるからという理由だけでどんどん流布されるのは、見ていて不思議な気がします。
池〇彰とか、池〇彰とか、池〇彰とか、、、
そんなことはさておき、この本が大変勉強になったので、今回は各章ごとに気になる部分を箇条書きでまとめておく。
「奇跡の成長」の出発点に見るウソの数々
- 戦時中、主に破壊されたのは大規模な軍需工場で転用された民生用工場の中には爆撃を免れたケースもたくさんあった。それらを元の民生用に戻せたことが復興を早めた要因でもあった。
- 政府が米軍と交渉して原材料を入手できたのも大きい。(材料がないと製品を作れない)
- 戦後の悪性インフレは金余りではなく供給不足によるもの。脱する方法はシンプルで工場の復活、生産手段を復活させて供給量が増えれば物価は落ち着く。金をばらまくことでインフレを促進するリスクはあるが、その金で設備が増えるので供給が需要に追いつていない場合、少し我慢していれば供給が増えインフレは自然に収まる。(アベノマスクの効果もそれだよね。文句言ってる人もたくさんいたけど。)
- 戦前の日本の産業界は、今のアメリカに匹敵するくらいのむき出しの「資本主義」。GHQの改革がなくても日本は「資本主義大国」だった。貧富の格差も大きかった。もともと資本主義の精神が根付いている国民だったので、GHQが統制を剥がせば元に戻るだけの話だった。(GHQが民主化したというわけではない)
- 農地改革で共産化を防いだ。戦後の日本は資本主義になるか社会主義になるかの瀬戸際にいた。農地改革を進めたことで農民たちは格安の値段で土地を買って地主になり、経済的にも余裕が生まれた。
- 日本の企業は賢いので、GHQに対して財閥解体を「やったふり」をしながらグループ化を認めさせた。
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「均衡しない=破綻」と思い込む人が多いが、「財政均衡」と「財政破綻」の中間にはいろいろな世界が存在する。家計と違い、国家財政はある程度の赤字をずっと続けていても大した問題にならない。杓子定規に一年ごとに均衡させようとするほうが経済には悪影響をもたらす。アルゼンチン、インドネシア、韓国みたいに。終戦直後、GHQと日本政府は安易に金融引き締めに走ったためインフレは収まったが深刻なデフレが起こって不況に突入。ドッジラインの緊縮財政のせいで深刻な不況だったところ、復興の最大の原動力になったのは政策ではなく「朝鮮戦争特需」。
高度経済成長はなぜ実現したのか?
- 高度成長の最大要因は「1ドル=360円」の有利な為替レート。高橋先生の試算によると、完全に自由な為替相場としたら1970年代の均衡レートは1ドル=140円。1ドル360円に決めてくれた人、日本ナメてた?(笑)
- 為替レート有利なうえに、日本の技術力がついてきたおかげで高度経済成長期を迎えることができた。
- 役人より企業の方が上手。(企業は生き残りがかかっている上、役人より真剣に取り組んでいるので当たり前といえば当たり前)。何がヒットするかわからない中、日夜様々な分野で開発を進めている企業が通産省にデータを提供。通産省は民間が出したビジョンの後追いをしていただけ。マスコミはさらに遅れて「最新ニュース」と報道の図式。
- オリンピックの効果は世界に目を向ける人が増えて様々な規制が見直される可能性があるところ。
奇跡の終焉と「狂乱物価」の正体
- 固定相場制とは「為替介入しない制度」ではなく、「常に為替介入をする制度」のこと。円安気味になりそうなら円を買い込み、円高に振れそうなときはドルを買いまくって介入をし続けることで維持される相場制。(維持の責任を負っているのは当時の大蔵省)
- 石油ショックで急激なインフレが起こったは嘘。1973年2月に制度上は移行していた固定相場から一気に変動相場に変わると輸出企業はバタバタ倒産してしまうので、大蔵省は裏の「ダーティ・フロート」で猛烈な為替介入を行う。市場に大量のマネーが供給されマネタリーベースが増えてインフレが生じる。石油ショックの前から消費者物価指数は上がっていた。石油ショックで追い打ちをかける形になり各月の物価上昇が20%を超えるインフレ状態となる。
プラザ合意は日本を貶める罠だったのか?
- プラザ合意以降、アメリカの圧力を受けて政府が円高誘導するようになったから日本企業が苦しむようになったのではなく、プラザ合意まで政府の裏の介入(ダーティ・フロート)でゲタを履かせてもらっていたのが、プラザ合意以降は実力勝負しなければなくなっただけのこと。
- 資本主義は問題の多い制度だが社会主義より修正が利きやすいのでうまく運営すれば社会主義より経済パフォーマンスは良くなる。両者の違いは「ミクロ経済学の領域」への政府の介入の度合いの差。マクロは官僚、ミクロのことは分権化して市場に任せるのが資本主義。社会主義体制下では官僚がやるべきことは人知の能力をはるかに超えているため、資本主義の方がパフォーマンスがよい。日本経済が成長できたのは、相対的にパフォーマンスの良い資本主義を選択したから。
- 役人が「改革」という言葉を使うときは、ほとんどの場合実質的に何も変えていない。
「バブル経済」を引き起こした主犯は誰だ?
- バブル期は株と土地以外は「超フツーの経済」。GDP成長率、物価上昇率、失業率などマクロ経済は至って健全。片方は極めて異常、もう一方は健全な状態。当時の日銀は正しく分析することができず、両者を分けずにまとめて一つの経済状態として考えてしまい、インフレでもないのに不要な引き締めをしてしまった。
- バブルは崩壊して初めてバブルとわかる。
不純な「日銀法改正」と、痛恨の「失われた二十年」
- バブル崩壊後に日銀がきちんと金融緩和して経済成長を促していれば、不良債権問題は5年くらいで問題のないレベルに解消していた。ミクロで見ると不良債権の問題は先送りにしない方がいいが、マクロで見るとマクロ経済を良くすれば不良債権は自然に解消する。(先送りしている間に実体経済が成長すれば株価も不動産の値段も上がる。)
- 日本のような「安定成長期」の将来の成長性はたかが知れている。民間の投資を増やせるかのポイントは「実質金利が高いか低いか」に絞られる。(※実質金利=名目金利ー(マイナス))予想インフレ率、デフレの影響で予想インフレ率が下がれば実質金利は上がることになる。⇒経済にとんでもないマイナス圧力を与えることになる。
まとめ
上記にはまとめなかったけど、竹中平蔵氏の話や前首相の安倍さんの裏側の話もおもしろかった。
→この本もいつか読んでみよう。
内閣官房参与に岡部信彦氏、高橋洋一氏ら6人 村井慶応大教授もhttps://t.co/jUOECSTS33
— 産経ニュース (@Sankei_news) October 13, 2020
岡部氏は感染症対策、村井氏はデジタル政策を担当する。ほとんどが菅義偉内閣発足後に首相と面会し、政策推進へ向け意見交換した経験がある。
高橋先生、内閣官房参与に任命されましたね。
楽しみ!
マクロ経済政策においては「失業者を減らすこと」が一番重要な目的です。そのほかのミクロのことに関しては、政府は民間の邪魔をせず、余計なことはしないで、民間の人に知恵を絞ってもらえばいいのです。