【書評】きずなと思いやりが日本をダメにする 最新進化学が解き明かす「心と社会」

 

きずなと思いやりが日本をダメにする 最新進化学が解き明かす「心と社会」がおもしろかったので気になるところをまとめておく。

 

  • 地球上に生きている生物はみな何らかの形で環境の変化に適応して生き残っているのだから、その意味ではみな等しい。現生動物はすべて「進化の勝利者」。
  • ダンバー数は150人くらい。相手の気持ちを忖度してその人のために適切なことをしてあげられるくらいの親密な関係を結ぶとなると、人間の脳の処理の能力には限界がある。
  • 『幻想の共有』で社会は作られている。物理的に同じ空間にいれば群れ、ヒトの社会はそれ以上のものがないといけない。同じ国民、同じ組織の一員、そういうアイデンティティの共有が人間の社会には必ず必要。そもそも「日本人らしさ」とか「アメリカ人らしさ」といったものは幻想。生物学的に見れば両方ともホモサピエンス。
  • どういう基準であっても同じグループに入れられたら、そこに人間は帰属意識というかアイデンティティを持ってしまう。人間は自分から幻想の共同体をつくり出してしまう存在。同じ側にいる人に仲間意識を感じる、そういう心の動きを持った個体のほうが進化環境においては生き残れた。大自然の中で生き延びるためには協力関係を作れないと共倒れしてしまう。
  • 日本人には謙虚さがあるとよく言われるが、それは心の奥ゆかしさではなく、閉鎖的な日本社会ではそう振る舞うほうが得だから。全ては状況の産物。人間の心の動きそのものはどこの国、どこの地域、どんな人種であろうと変わらない。(脳の仕組みには変わりはない)
  • 私たちの脳の機能は狩猟採集時代とさほど変わらない。相当な無理算段をして今日の社会は成り立っている。私たちの共感能力や因果関係の推論能力がかえって社会に害悪となることも起きるようになった。(人間の心の働きにつけこんで宗教で洗脳したり、戦争を起こしたり)
  • 社会の中で差別が行われるのはそこに何らかのメリット(肌の色の違う人、外国人、女性が参入することを妨害すれば自分たちの既得権益を守れるなど)があるから。差別をなくしたければ、差別をすると損をする状況を作ればいい。
  • 差別追放は社会の繁栄に直結する。歴史的に見ても、人権思想が生まれたことで人類社会が飛躍的に発展したのは事実。個別に見ても、ソ連のような全体主義の国は滅び、民主主義を採用した国は長く続いている。生まれや階級などで差別をしない社会のほうが強い。

超新星爆発が起こって、その残骸から地球上に様々な生命が誕生して、私たちホモサピエンスはたくさんの集団を作って世界中に散らばり、それぞれの環境・状況の中で形成されているのよね~。

それを思うと、どうしてそういう発想になるのか、どうしてそういう正義になるのか、どうしてそういう偏見を持つのか、どうしてそのような言語を使うようになったのか、とかとか知りたくなるなぁ。

時間かかるけど、いろんな国の言語も勉強してみようかな~。